脂肪腫とは
脂肪腫は、皮膚の下の脂肪の層などで、脂肪の細胞が増えてできるかたまりです。体の中のどこにでもできますが、背中・肩・首・腕・太もも・おしりなどに多く見られます。
多くは、皮膚の下にやわらかいしこりとして触れ、押すと少し動きます。大きさは数ミリから、10センチをこえるものまでさまざまです。
皮膚の下の浅い所にできるもの(皮下)のほか、筋肉の中や筋肉の間など、深い所にできるものもあります。深い所のものは、外から触ってもはっきりしないことがあります。
脂肪腫の種類
血管が多くまざった「血管脂肪腫」は、押すと痛むことがあり、いくつも同時にできることがあります。ほかにも、筋肉の中にできるものなど、いくつかの種類があります。
粉瘤との違い
| 脂肪腫 | 粉瘤(アテローム) | |
|---|---|---|
| 中身 | 脂肪の細胞のかたまり | 皮膚の下の袋に、垢(角質)や皮脂がたまったもの |
| さわった感じ | やわらかく、押すと少し動く | 弾力のあるしこり。皮膚とくっついていることが多い |
| 表面 | 皮膚の表面に穴はない | 中央に黒い点のような小さな穴が見えることがある |
| におい・中身 | 中身が出ることはない | 押すと臭いのある中身が出ることがある |
| 炎症 | 赤く腫れることは少ない | 赤く腫れて痛むことがある |
下の図は、脂肪腫ができる場所を表した模式図です。脂肪腫は、皮膚の下の脂肪の層(皮下脂肪)の中にできる、脂肪の細胞のかたまりです。薄い膜(被膜)に包まれていて、皮膚の表面とはつながっていません。

粉瘤は、皮膚の下にできた袋の中に、垢(角質)や皮脂がたまったものです。たまった中身は袋の外に出ていかないため、少しずつ大きくなります。中央に黒い点のような小さな穴が見えることがあり、強く押すと、そこから臭いのある中身が出てくることがあります。袋の中身に体が反応して、赤く腫れて痛むこと(炎症)もあります。
脂肪腫は、袋に中身がたまったものではなく、脂肪の細胞そのものが増えたかたまりです。皮膚の表面とつながっていないため、中身が外に出ることはなく、赤く腫れることは少ないです。
見た目だけでは見分けにくいこともあります。診察では、触ったときの硬さ・動き・大きさ・深さを確かめ、必要に応じて画像検査をします。粉瘤については粉瘤(アテローム)のページをご覧ください。
脂肪腫は痛む?
多くの脂肪腫は、痛みがありません。ただし、血管脂肪腫のように押すと痛む種類や、大きくなって神経を押すことで痛むことがあります。
注意したいのは、痛みがないことが、悪いものではない証拠にはならないことです。日本整形外科学会の一般向けの解説では、皮膚の下や筋肉などのやわらかい組織(軟部)にできる腫瘍は、悪性でも痛みがないのが普通だとされています。痛みがなくても、気になるしこりはご相談ください。
悪いもの(脂肪肉腫など)との見分け
脂肪腫に似たしこりの中には、まれに悪いもの(脂肪肉腫などの軟部肉腫)があります。大きな脂肪のしこりの中には、悪性度の低い脂肪肉腫(高分化脂肪肉腫)のこともあり、見分けが必要とされています。
早めに受診してほしいしこり
- 急に大きくなってきた
- 大きい
- 硬い・ごつごつしている
- 深い所にある・動かない
- 一度取ったあと、また出てきた
軟部肉腫は痛みを感じにくいことが多く、体の深い所にできたときは、大きくなってから初めて気づくことも珍しくないとされています。気になるしこりは、大きさや痛みにかかわらず、早めにご相談ください。
悪いものの心配があるときは、専門の医療機関(大学病院など)にご紹介します。
見分けの説明は、日本整形外科学会「軟部腫瘍」と、国立がん研究センターのがん情報サービス「軟部肉腫」をもとにしています。
手術の前の検査
脂肪腫かどうか、どのくらいの大きさで、どの深さにあるかを確かめるために、必要に応じて、超音波(エコー)やMRIなどの画像検査を行います(検査によっては、ほかの医療機関にお願いします)。
| 検査 | わかること |
|---|---|
| 超音波(エコー)検査 | しこりの大きさ・深さ・中身の様子を確かめる |
| MRI・CT 検査 | 大きいもの・深いもの・悪いものの心配があるものを、くわしく調べる |
手術の前に画像で確かめ、手術のあとに取ったものを病理検査で確かめることで、悪いものを見落とさないようにします。日本整形外科学会の解説でも、悪いものかどうかを確かめずに取ってしまうことに注意がうながされています。
手術(取り除く方法)
脂肪腫は、薬で小さくすることはできないため、手術で取り除きます。
下の図は、皮膚の下の脂肪の層にある脂肪腫と、手術で膜ごと取り出すようすを表した模式図です。

脂肪腫は薄い膜に包まれた脂肪のかたまりです。手術では、この膜ごと取り出すことで、取り残しを少なくすることを目指します。
- 局所麻酔をして、しこりの上の皮膚を、しわの向きなどに合わせて切ります。
- 脂肪腫を、まわりの組織からはがすようにして、かたまりごと取り出します。
- 取ったあと、傷を縫い合わせます。大きいものでは、血がたまらないように細い管(ドレーン)を入れることがあります。
- 取り出したものは、病理検査に出して、脂肪腫であること・悪いものではないことを確かめます。病理検査の結果によっては、追加の手術や治療が必要になることがあります。
皮膚の下の浅い所の小さなものは、日帰りの手術で取り除けることが多いです。大きいもの・深い所のもの(筋肉の中など)は、入院の手術が必要になることがあり、その場合は専門の医療機関にご紹介します。
傷の長さは、脂肪腫の大きさによって変わります。形成外科として、傷あとが目立ちにくいように縫い合わせます。
手術の流れ
ご予約・ご来院ご予約のうえ、ご来院ください。
診察・検査しこりを診て、必要に応じて画像検査をします。手術の方法・費用・リスクをご説明します。
手術の日は、診察のときにご相談して決めます。大きさ・ご予定によって、別の日になることがあります。
手術(日帰り)局所麻酔をしてから手術をします。麻酔の注射のときにチクッとした痛みがありますが、手術中の痛みは抑えられます。
お帰り・抜糸手術のあとは、そのままお帰りいただけます。
抜糸は、手術から1〜2週間ほどあとに来院していただきます。
抜糸のあと、傷あとをきれいにするために、約3か月、テープを貼る処置をすることがあります。
費用(保険診療)
脂肪腫の手術は、保険診療です。皮膚の下にある脂肪腫の手術の費用は、国が決めた点数で、大きさ(長い方の直径)と場所によって決まります。
顔・首・頭・ひじから先・ひざから下にできたもの
| 大きさ | 手術料(3割負担) |
|---|---|
| 2cm未満 | 約4,980円 |
| 2cm以上4cm未満 | 約11,010円 |
| 4cm以上 | 約15,030円 |
それ以外(胸・おなか・背中・おしり・腕・ももなど)にできたもの
| 大きさ | 手術料(3割負担) |
|---|---|
| 3cm未満 | 約3,840円 |
| 3cm以上6cm未満 | 約9,690円 |
| 6cm以上12cm未満 | 約12,480円 |
| 12cm以上 | 約24,960円 |
筋肉の中など、皮膚の下より深い所にあるものは、別の手術の点数になります。このほかに、診察料・麻酔や薬・画像検査・病理検査などの費用が、別にかかります。
表の金額は、厚生労働省の令和8年度の診療報酬点数表(K005・K006 皮膚、皮下腫瘍摘出術)と留意事項の通知(皮膚または皮下にある腫瘍は K005・K006 で算定)をもとに、1点10円で計算した手術料だけの目安です。
手術のあとの過ごし方
- 手術の当日は、お風呂(湯ぶね)には入らないでください。シャワーは浴びられますが、傷はぬらさないようにしてください。
- 手術の当日は、お酒をひかえてください。
- 抜糸までの間は、長いお風呂・サウナ・激しい運動をひかえてください。
- 痛みがあるときは、お渡しする痛み止めを飲んでください。
- 抜糸のあとも、傷が赤い間は日焼けをさけると、傷あとが目立ちにくくなります。
- 出血が多い・傷のまわりの赤みや腫れや痛みが強くなる・熱が出た、などのときは、早めにご連絡ください。
手術のあとの経過
手術のあとは、少しの出血・軽い赤み・腫れ・痛みが出ます。出血や痛みは、少しずつおさまっていきます。
抜糸のすぐあとの傷あとは、赤みと硬さがありますが、時間とともに赤みは薄く、やわらかくなっていきます。抜糸のあとにテープで傷あとを固定するのは、傷あとを目立ちにくくするためです。
リスク・副作用
- 手術のあとに、痛み・腫れ・内出血が起こることがあります。
- 傷の中に血や液がたまる(血腫・漿液腫)ことがあります。
- 傷に細菌がついて、赤く腫れる(感染)ことがあります。
- 傷のまわりに、しびれや、さわった感じが鈍くなる(知覚鈍麻)ことがあります。
- 傷あとが残ります。傷あとは、完全に消えることはありません。体質や場所によっては、傷あとが赤く盛り上がる(肥厚性瘢痕・ケロイド)・広がることがあります。
- 取り残しがあった場合や、種類によっては、再発することがあります。取り切れなかった場合や再発した場合は、もう一度手術が必要になることがあります。
- 病理検査の結果によっては、追加の手術や治療が必要になることがあります。
- これらの症状があるときは、受診してください。
- 次の方は、治療を受けられないことがあります。事前にお知らせください。
- 妊娠中・授乳中の方
- 心臓の病気がある方、ペースメーカーや埋め込み式除細動器を使っている方
- 糖尿病の合併症がある方
- 膠原病など、自己免疫の病気がある方
- 出血しやすい病気がある方、ワーファリン・アスピリンなど血液をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方
- ステロイドや免疫抑制剤で治療中の方
- いま治療中の病気がある方
- 薬のアレルギーがある方
- 光過敏症の方
- 治療する所に、腫れ・炎症・感染症がある方
- 治療する所に、金の糸や金属のプレート、シリコンが入っている方
- 最近、ヒアルロン酸注入やスレッドリフトを受けた方
- ケロイドのある所の治療を希望する方、ケロイド体質の方
- ヘルペスウイルスに感染している方
- 日焼けをしている方
- 治療する所に、入れ墨(タトゥー)がある方
- 診察のうえ医師が不適当と判断した場合は、手術をお断りすることがあります。
よくある質問
- 脂肪腫は何科に行けばいいですか?
- 形成外科・皮膚科・整形外科などで診ています。当院は形成外科のクリニックで、皮膚の下の浅い所の脂肪腫の診察と手術を行っています。
- 脂肪腫は放っておいても大丈夫ですか?
- 小さく変化のないものは、すぐに取らなくてもよいことがあります。ただし、自然に消えることは少なく、ゆっくり大きくなることが多いため、気になるときはご相談ください。
- 痛みがないので安心ですか?
- 痛みがないことは、悪いものではない証拠にはなりません。急に大きくなる・硬い・大きい、などのときは早めにご相談ください。
- 粉瘤との違いは何ですか?
- 脂肪腫は脂肪の細胞のかたまり、粉瘤は皮膚の下の袋に垢や皮脂がたまったものです。くわしくは粉瘤との違いをご覧ください。
- 手術は日帰りですか?
- 皮膚の下の浅い所の小さなものは、日帰りの手術で取り除けることが多いです。大きいもの・深いものは、入院の手術が必要になることがあります。
- 手術は痛いですか?
- 局所麻酔をして行います。麻酔の注射のときにチクッとした痛みがありますが、手術中の痛みは抑えられます(感じ方には個人差があります)。
- 傷あとは残りますか?
- 切った所に傷あとが残り、完全に消えることはありません。形成外科として、目立ちにくいように縫い合わせますが、残り方には個人差があります。
- 再発しますか?
- 取り残しがあった場合や、種類によっては、再発することがあります。
- 保険は使えますか?
- 保険診療です。手術料は大きさと場所で決まります。くわしくは費用をご覧ください。
- 取ったものは検査しますか?
- 取り出したものは、すべて病理検査に出して、脂肪腫であること・悪いものではないことを確かめます。
- いくつもできているのですが。
- 脂肪腫は、いくつも同時にできることがあります(血管脂肪腫など)。数・大きさ・場所を診て、どれを取るかご相談します。
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